こうして今日も、世界で肉は作られる。 「見てきました、“動物が肉になるまで”」 世にも稀なイラストルポルタージュ!! 「食べるために動物を殺すことを可哀相と思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの? 他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」 アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。 世界の屠畜現場を徹底取材!! いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。 「間違いなくオンリーワンの本」佐野眞一氏(解説より) 【目次】 まえがき 第一章 韓国 第二章 バリ島 第三章 エジプト 第四章 イスラム世界 第五章 チェコ 第六章 モンゴル 第七章 韓国の犬肉 第八章 豚の屠畜 東京・芝浦屠場 第九章 沖縄 第十章 豚の内臓・頭 東京・芝浦屠場 第一一章 革鞣し 東京・墨田 第一二章 動物の立場から 第一三章 牛の屠畜 東京・芝浦屠場 第一四章 牛の内臓・頭 東京・芝浦屠場 第一五章 インド 第一六章 アメリカ 終章 屠畜紀行その後 あとがき 文庫版あとがき 主要参考文献一覧 解説 佐野眞一
まだ一月だが、二〇二五年に読んだスゴイ本番付に私はきっとこの本を入れるだろう……!と興奮冷めやらぬ思いである。日本語が読めて、お肉をふつうに食べて暮らしている人は、もう、絶対一度は読むべきです!、とスーパーの前で本書を百冊くらい配りたいくらいの気持ちだが、そんな鼻息荒い人の話は聞きたくないなというもう一人の冷静な自分もいるので、まずは本の感想を落ち着いて書いてみるんである。 ▼もとは解放出版社『部落解放』の連載である。単行本としての刊行は二〇〇七年。日本における、屠畜業や皮革業と差別との関係についての疑問が、本書のベースにある。私にとっては、上原善広『日本の路地を旅する』を読んだ時に抱いた感想と通じるところがあった。 ▼諸外国では、職業に対する差別意識は必ずしも当たり前ではないようだ。が、一方でよくあるのが、「この動物を殺して食べるのはかわいそう(例:牛はいいが犬はダメとか)」「動物を殺して食べるにしても、こういう殺し方は残虐である(例:大規模屠畜はダメとか)」といった主張。さらによくわからないのは「とにかく動物を殺すのは悪い」、言っている本人がベジタリアンならまだしもそうとは限らない。もちろん人間のいうことに矛盾はつきものであるが、それにしても納得いかないんだよなあ、というのが本書の立場。 ▼こうした差別や批判について、内澤さんもいろいろ思うところを書いたりインタビューしたりしているし、私もたくさん考えさせられた。が、この本のスゴイところは、言説や思索やイデオロギーにカッカして浮き上がりそうになる脳みそをふん掴まえて地面にとどめてくれるだけの濃さと重さを持った、取材報告そのもの。バリ島やエジプトやモンゴルなど世界の屠畜現場ももちろん興味深いが、何より東京品川の芝浦屠場のルポルタージュが圧巻。これが我が国のお肉(の一部)ができるまで(の工程の一部)なのか……と思っているところに今度はアメリカ屠畜場の取材記録。私はモンゴルの草原で屠られた羊肉を食べる機会は一生ないかもしれないが、スーパーで「国産」と「アメリカ産」のお肉を見比べてうーんと悩んでどっちかを選ぶことはしょっちゅうある。遠い国の旅の本だったのが、一気に自分事である。 ▼終章「屠畜紀行、その後」もスゴイ。内澤さん、バリ島で宣言した「いつか自分でも動物をつぶす」を東京で実行するんであるが、その実感のこもった体験記を読んでいると、本当にしみじみと胸に迫るものがあった。文庫版(二〇一一年刊行)あとがきでは、その後の内澤さんの屠畜関連の活動として豚を飼ったなどと書かれているし、というか二〇二〇年刊行の『着せる女』では「小豆島でヤギを飼って暮らしている」という話だったし、二十年弱遅れではあるが内澤さんのやること書くもの気になりすぎるので、追っていきたい。出版業界のおじさんたちにスーツ買わせる(語弊あり)力もスゴかったけど、こんなスゴイ人ならあれくらい何さという気がしてきた。 ▼個人的、関連(連想)図書 ・柞刈湯葉『まず牛を球とします。』 →ストレートに、SFが食肉問題をどう解決してくるか。 ・ビアトリクス・ポター『こぶたのロビンソンのおはなし』 →本書で内澤さんが悩んでいた、動物を擬人化して感情移入する気持ちと、その動物を美味しく食べたい気持ちとの矛盾を、いとも軽く飛び越える。……いや、ただただそのままぶつけている? ・夏目漱石『私の個人主義』の中の「道楽と職業」。社会が高度になって分業が進むと人間は不完全になる、という話だった記憶。
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